優等生の失態。

中学3年の頃に卒業前の最後の行事として野外学習があった。

先生達は最後の行事ということもあり、準備等に特に力を入れていた。生徒に対しては「卒業前の最後の行事やぞ!やから、しっかりしろよ!」「忘れもんなんかするんちゃうでー!」と生徒たちによく言って聞かせていた。

野外学習の内容は山に登って山頂でみんなでカレーを作って食べるという、なんて事ないよくある内容だ。

生徒の持ち物は「カレーのルー」「野菜」を班で手分けして持って来ないといけないのと、そして各自全員が持って来ないといけない食材の一つに「お米」があった。

この「お米」を忘れると自分がカレーのルーしか食べれないので絶対に持って来ないといけないから、先生たちはお米を忘れないように念を押すように言っていた。

野外学習当日になり一学年約240人の中3の生徒達はグランドに集結した。
朝礼台の上に登った恐ろしい野球部の英語の先生は卒業が近い僕達に「お前ら卒業だからといってたるんでたらあかんぞー!!」と激を飛ばしていた。
恐ろしい英語の先生は続ける。「お前ら忘れもんしてないやろうな」「忘れもんした奴ぁ!立ってみー!!」と凄んだ。

ちらほらと立ち始めた。顔ぶれをみると失礼だが、よく忘れ物をする決まった顔ぶれが立ち上がっていた。そして、そして、よく見るとなんと、S君が立っていた。S君と言えば成績優秀で行事等も積極的に参加し、生徒会役員もこなし、先生達からの信頼も厚く依怙贔屓(えこひいき)にされている超優等生ではないか。今思えば僕たちは少しざわついた感じがせんでもなかった。

優等生が立ち上がったことにより、先生達もなんだか跋が悪い感じだった。
恐ろしい英語の先生は少し優しくなった口調で続ける。「お前ら何を忘れたんや。」「Aは?」

ふてくされた生徒A:野菜です

恐ろしい英語の先生:Bは?

ふてくされた生徒B:ルー

とこんなやり取りが何人かあり、遂に優等生S君の番だ。

恐ろしい英語の先生:Sは?

優等生S君:(目を真っ赤にして半泣きの状態で)「お、お、お・こ・め(お米)」
と言ったと同時に突然に泣き出した。
突然に泣き出した優等生S君を見て、恐ろしい英語の先生もさすがに急に優しくなり「お前らもういい!座れ」と忘れ物した生徒全員がお咎めなしに許された。
(優等生S君が忘れ物をしていなかったら、確実にこれから説教&しばきタイムが待っていた。)

とその時だった。グランド横の門から優等生S君のお母さんがスーパーカブに乗りながら「Sちゃーん!お米〜!!」
と叫びながらお米を持ってきたではないか!僕たちはざわつき、先生たちは「あ、どうも~!」と愛想よくふりまう。

めでたく優等生S君はママのファインプレーによって山頂でカレーを食べる事ができた訳だが、中学卒業前にしっかりしないといけなかったのは、間違いなく、優等生S君だった。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です