永く物を使う。

2011年12月25日にお亡くなりになった柳宗理(ヤナギソウリ(本名はムネミチ))先生の「エッセイ」と言う本を読んだ。
インダストリアルデザイナーとして有名で雑誌に頻繁に取り上げられていて名前は知っていたものの、勉強をしてみようとは思わなかったが、最近になりデザインというものに興味をもって初めて本を読んで見ようと思った。その矢先にお亡くなりになったので、悲しさもひとしおだった。

柳宗理さんの提唱するアノニマスデザインは彼の父である柳宗悦(ヤナギソウエツ)の「民藝」からくる影響が大きい事がわかった。
「民藝」とは簡単に言うと生活の中で培われた工芸品や美術品を「民藝」と呼ぶらしい。
即ち有名なデザイナーがデザインした派手な色や模様や形をした茶碗や徳利等の工芸品や美術品よりもその地域で生まれ、根ざした名もなき陶工や住人が生み出す工芸品や美術品の方が精神性も反映され、その地域独特の形や風貌を醸し出していて、何物にも代え難い生活用品の事を示すらしい。
似た事例でピカソがアフリカ民族が生み出した面や装飾品を見て感嘆し、その後のキュービスムに影響を与えた事がある。

その「民藝」を根源として宗理さんが提唱するのがアノニマスデザインだ。
どういったものがアノニマスデザインかと言うと、例えば野球のボールや亀の子束子、ブラウンの計算機、科学実験用の蒸発皿、ジーパン、スイス製のピッケル、ラミーのボールペン等である。

なるほど、野球のボールなんかはあの形で縫い目もあれ以外に考えられない。初めから縫い目の形も少しは違ったであろう。
長い時間をかけて今の縫い目の形と数になったようだ。もちろん今後ももしかしたら、縫い目の形状も今後、変わってくるかもしれない。
亀の子束子なんかも大小が変われどあの形以外の形をされても、どうも使いにくそうだ。
例に挙げた品々を写真で見ると「んっ!?これがかっこいいの?」というようなシンプルで装飾もない単純な品々ばかりです。
って考えると、生活に馴染み過ぎて意識がデザインに行かない物にアノニマスデザインというものが多いとMr.Unisexは感じた。

Mr.Unisexは亀の子束子を見て素晴らしい「デザインだ」と感じることはこの本を読むまでは考えなかったでしょう。
ジーパンにしても「素晴らしいデザインだ!」と思って履いていません。まあ「無難だしな」と感じる所が本音かな。
でもそこに目が行くなんてさすが、インダストリアルデザイナーとして柳宗理さんは常に身の回りの物に気を付けて見ていたんだなと思ってしまいます。

流行のデザインの物で身の周りを固めてしまうと、結局は直ぐに飽きてしまい、また新しい物を買ってしまうというサイクルより、いいものを永く使う方が環境にも家計にも助かり、また気に入った物を使う事で心も満たされると言う事なんだろう。

まだまだMr.Unisexの周りにアノニマスデザインが有りそうだ。いや、Mr.Unisexなりのアノニマスデザインを見つけて行きたい。
Mr.Unisexの生活に馴染んで気に入った物を永く使い続け、作家生活を心もろとも豊かに暮らしたいと思った次第であります。

柳宗理先生、ありがとうございました。

アノニマスデザインの一つ野球のボール
アノニマスデザインの一つ野球のボール

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