そごう西武のあの日Vol.03〜初めてのクレーム〜

楽しいそごう神戸店の玩具売り場の仕事だったけど、世の中、そんなに甘くはなかった。入社早々、恐ろしい挫折が待っていた。これが百貨店か!という絶望感すら味わった。

玩具売り場では早番と遅番がある。早番は9:45〜17:45、遅番は12:15〜20:15までだったように思う。
基本的に早番2人、遅番2人とうフォーメーションで1日のシフトが組まれ、新人同士が組むことがないように新人はベテランと必ず一緒になるように考えられてターミンが一ヶ月毎にシフトを組んでいる。

しかし、一ヶ月のシフトの中でどうしても新人が2人が組む事になってしまう日がわずかに出来上がってしますのです。そんな新人2人がいる時に限って事件は起こるのである。

その日は私と同時期に入社したクメッチと一緒に新人2人が早番だった。しばらくして店長のハセヤンも出社してきた。多分、新人2人だと心配だったのだろう。クメッチと雑談(雑談は本当はしてはいけない)をしながら商品を覚えたりしていた時だった。
ちょっと派手目の20代後半くらいの若い女性とその母親らしき女性2人が売り場にやってきて「ちょっとこれ動かして」と言って持ってきたおもちゃが、電池を入れてワンワンと鳴く定番となっている犬のおもちゃ(確かイワヤ)だった。お客様の話し方からしてちょっとヤンキー感がありややこしそうな雰囲気がプンプン漂っていた。

私は簡単に動かせるもんだと箱から出そうとしたがなかなかうまく出せなかった。なぜかと言うと、本体の犬が針金でガチガチに箱に固定されていて、それを外すのにかなり手間取ってしまったのだ。ベテランの玩具売り場の店員なら、想定の範囲なので慌てる事もなく、冷静さを保ち、簡単に取り出せる事ができるのだが、新人となると経験の無い初めての事であり、かなり焦ってしまうのである。
そして何より、目の前でヤンキーチックなお客様が見ているというプレッシャーが更に手元を狂わせるのである。そして更に焦るという負のループが開始されるのである。

犬を動かせない状態が10分ほど経っただろうか、お客様がイライラしだしている雰囲気が漂ってきているのがわかり、私はたまらず、助けを求めようと店長のハセヤンを見ると、ハセヤンは売り場の端っこの方でチラチラとこちらを伺いながら、脚立にのり上の方の棚の商品整理をしていた。
新人の私が困っているのにも関わらず、私たちを助けず、ハセヤンは見て見ぬふりをしていた。その時、私はハセヤンを「こいつ店長のクセに最低や」と思った。
ヤンキーチックなお客様がイライラし、私が手間取っているのは一目瞭然だったはずだ。

そして遂に若い娘のお客様が「ちょっと!早くしてよ!いつまで待たせんの?責任者呼んで!」とブチギレたのである。
次回へ続く

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